どうも、こんにちは。のぶです。
臨床試験データについて個人的に興味深いものを取り上げてみようかと思います。
これは数日前に(2021年8月28日)、The Lancetに掲載された論文です。
非常に興味深いです。これまで、高血圧治療は、ARBやCa拮抗薬などの単剤から
スタートして治療がなされているかと思っていますが、本試験結果は、
4剤の異なる薬剤を少量ずつ同時服用して試験が行われています。
昨今ではARBとCa拮抗薬、利尿剤などの配合剤が発売されておりますが、
今回は4種の異なる薬剤で最初から一気に降圧してしまおうという戦略です。
試験概要は?
背景
超低用量の4剤併用療法から始める高血圧の治療戦略は、単剤療法から始める
戦略よりも効果的であるという仮説を立て試験が行われています。
方法
QUARTETは、オーストラリアの成人(18歳以上)で、未治療または単剤治療を
受けている高血圧症患者を対象とした多施設共同二重盲検並行群間無作為化
第3相試験です。
参加者は、クアッドピル(イルベサルタン37.5mg、アムロジピン1.25mg、
インダパミド0.625mg、ビソプロロール2.5mgを含む)で開始する治療と、
単剤治療の対照(イルベサルタン150mg)のいずれかに無作為に割り当てられた。
血圧が目標値に達していない場合は、両群ともに薬を追加することができ、
まずアムロジピン5mgが投与された。
参加者はオンラインの中央無作為化にて、無作為に割り付けられた。
割り付けは1対1で行われ、サイトによって層別された。
割り付けは、治験薬メーカーとマスクされていない統計担当者1名を除き、
すべての参加者と研究チームメンバー(治験担当者と結果評価の担当者を含む)
に対してマスキングされた。
主要評価項目は、12 週間後の診察時収縮期血圧の差であった。
副次評価項目は、血圧コントロール(標準診察室血圧140/90mmHg未満)、
安全性、忍容性であった。
サブグループは長期的な効果を評価するために12か月間無作為に割り付けを継続した。
解析はintention to treatによる。
本試験は,オーストラリア・ニュージーランド臨床試験登録機関
(ACTRN12616001144404)にプロスペクティブに登録され現在は終了。
結果
2017年6月8日から2020年8月31日までに、591名の参加者を募集し、
適格性を評価したのは743名、不適格または辞退したのは152名、
300名を初回クワッドピル治療の介入群に、291名を初回標準用量単剤治療の
対照群に無作為に割り付けた。参加者591名の平均年齢は59歳(SD12)、
男性356名(60%)、女性235名(40%)、白人483名(82%)、アジア人70名(12%)、その他の民族38名(6%)、
ベースラインの平均非診察時血圧は141mmHg(SD13)/85mmHg(SD10)で
あった。12週目までに、介入群では300人の参加者のうち44人(15%)が
血圧測定薬を追加していたのに対し、対照群では291人の参加者のうち
115人(40%)が追加していた。
収縮期血圧は6~9mmHg(95%CI 4-9-8-9、p<0-0001)低下し、
血圧コントロール率は介入群(76%)に対して、
対照群(58%、相対リスク[RR]1-30、95%CI 1-15-1-47、p<0-0001)で高かった。
12週目の有害事象による治療中止にも差はなかった(介入群4.0%、対照群2.4%、p=0-27)。
継続した417名の患者では介入群よりも対照群の方がuptitrationの発生頻度が高かった(p<0-0001)。
しかし、52週目には介入群(81%)と対照群(62%、RR 1.32、95%CI 1.16-1.50)の間で、
平均収縮期血圧は7.7mmHg(95%CI 5.2-10.3)低く保たれ、血圧コントロール率も高かった。
無作為に割り付けられた12週間までの全参加者において,
介入群では7件(3%),対照群では3件(1%)の重篤な有害事象が発生した。
解釈
固定用量の4剤併用療法を早期に実施する戦略は、単剤療法を開始する一般的な
戦略と比較して、より大きな血圧低下を達成し、維持することができた。
本試験では、4剤併用療法の有効性、忍容性、簡便性が示された。
Initial treatment with a single pill containing quadruple combination of quarter doses of blood pressure medicines versus standard dose monotherapy in patients with hypertension (QUARTET): a phase 3, randomised, double-blind, active-controlled trialhttps://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01922-X/fulltext
個人的見解
4剤併用療法の副作用は意外ときつくない?
初回から、がっつりと血圧を下げる戦略かと思います。この場合、血圧の急激な
低下を懸念するのではないかと思います。
収縮期の非診察血圧で 141mmHgから降圧スタートで、ここからいきなり4剤
でスタートするのか、ちょっと下がりすぎてフラフラしたりしないかなと思いましたが
意外と副作用は少なそうです。これは、それぞれ極少量を服用しているため
でしょうか。
血圧は一気に下げるのが良いのか?徐々にが良いのか?
これは、もしかしたら何かしらの試験によって確認されているかと思います。
私が調べたところ、やはり高齢者や臓器虚血をもたらす動脈狭窄病変などを
有 する高血圧では、あまりはやい降圧スピードは,合併症や虚血病変をもたらす
と考えられている ようでした。
3週間後の平均血圧は、標準治療を受けたグループが127/79であったのに対し、
クアッドピルを投与したグループは120/71であったようですが、
これがはやいのか遅いのかはわかりませんが、各薬剤をごく少量ずつ投与しているので、
副作用も最小限に抑えられているのと、効果は落ちていない点が素晴らしいと
思いました。
Per Protocol Population解析結果は?
解析はITTでしたので、降圧不十分な場合にCa拮抗薬の追加も含めての
降圧効果の検証結果が報告されたものと解釈しています。
極少量の4剤併用療法を降圧効果のみにフォーカスするなら、
やはりPerprotocol Population(PPP)解析にて、評価するのが良いのではないか
というのが個人的な見解です。
残念ながら、本論文は購入しないとダウンロードできませんので、
解析はされているのかもしれませんが、私自身は論文が読めていませんので
PPP解析の結果は分からないという感じです。すみません。