メディカルアフェアーズ(MA)は、会社によってやっていることも、目指していることも少しずつ違います。同じ「MA」の求人でも中身が違う可能性があり、それが入社後のギャップの一番の原因になります。この記事では、MA転職で確認したい5つの軸と、入社しないと見えないこと、そしてギャップを小さくする方法をまとめます。
この記事を書いている私(のぶ)は、製薬会社でMR、MSL、MAを経験し、外資・内資・規模の違う会社で働いてきました。
MAは会社によって中身が違う
MAという部門名は同じでも、次のような点が会社ごとに違います。
- 新薬の上市を控えている会社と、発売から時間がたった製品が中心の会社では、仕事の重心が違う
- 外資と内資では、日本で何を決められるかが違う
- 組織の大きさによって、一人が担う範囲が違う
前の会社のMAのやり方が、次の会社でもそのまま通じるとは限りません。職種名が同じだからこそ、ずれに気づきにくいところです。
MA転職で確認したい5つの軸
軸1:何を「成果」としているか
臨床研究や論文でエビデンスをつくること、医師との科学的な交流でインサイトを集めること、医療者向けの教育、上市の準備。どれもMAの仕事ですが、重心は会社によって違います。私は、MSLの役目の中心はエビデンスをつくることにあると考えていますが、面談件数や情報提供が中心の会社もあります。
面接での聞き方:「MAとして、今年いちばん力を入れていることは何ですか」
軸2:製品がどの段階にあるか
発売前後なら、エビデンスの整理や医師への科学的な説明、上市準備が中心。発売から時間がたった製品なら、実臨床のデータづくりや新しい疑問に答える研究に重心が移ります。
面接での聞き方:「このポジションが担当する製品は、今どの段階ですか」
軸3:日本で何を決めているか
外資では、グローバルの戦略を日本でどう実行するかが中心になりやすく、内資では自分たちで戦略を決める場面が多くなります。英語を使う機会は外資が多く、裁量は日本に決定権がある内資の方が大きいと感じます。
軸4:MAの中の分業
大きな組織では、MSL、メディカルプランの担当、臨床研究の担当、医療情報の担当と役割が分かれています。小さな組織では一人が何役も担います。私が中小規模の会社に移ったときは、MAとMSLを兼ねる立場でした。小さい会社ほど教えてくれる人が少ないぶん、自分で調べて考えて動くので、経験の幅は広がります。
軸5:営業との距離
業界のルールでは、MSLは営業部門から独立した組織に所属し、売上に関連する指標で評価しないことになっています(日本製薬工業協会「メディカル・サイエンス・リエゾンの活動に関する基本的考え方」)。ただ、MRとの連携の仕方、情報共有の範囲、同行の判断といった運用の細かさは会社によって違います。
入社しないと見えない3つのこと
1. メンバー構成
面接で会えるのは、上司になる人と人事と役員くらいです。誰がいて、どんな経歴で、誰が実質的にチームを回しているのかは、入社して初めて分かります。
2. 雰囲気
会議で誰が発言するのか、上の人の意見に反対できるか、失敗したときにどう扱われるか。雰囲気は言葉で説明しきれないので、入ってみるまで分からない部分が残ります。
3. 本当に求められる役割
私は以前、MAの組織を立ち上げる中小規模の会社に移りました。面接でも内定後にも仕事内容を確認しましたが、入社後はMAの仕事をするはずが、MSLの業務が中心になりました。理由は「入社後に方針が変わった」でした。方針がなかなか出ない、小さな組織ではひとりの摩擦が全体に響く、といった大手では見えなかった難しさもありました。
ギャップを小さくするための質問
- チームは何人で、どんな経歴の方がいますか
- このポジションの方は、1週間をどう過ごしていますか
- 最近うまくいった取り組みと、うまくいかなかった取り組みは何ですか
- メディカルの方針は誰が決めていて、今年の方針は何ですか
- 入社後に方針が変わった場合、役割はどう決まりますか
- 入社後3か月で、何ができていれば期待通りですか
慣れるまでの時間と、最初の3か月
転職して職場に慣れるまでの時間は、私の場合、短いと1か月、長いと半年以上でした。最初の3か月は、次のことを意識してきました。
- 大きな成果を急がない。MSLなら「うまくいった」と言える面談が一つあれば十分
- 知らないことは「知らないので教えてください」と言う
- 周りの人を立てる(MSLならまず担当のMRさん)
- 医師に上から教える姿勢で臨まない
転職後の最初の数か月で、周りに「この人は大丈夫だ」と思ってもらえるかどうかが、その後の働きやすさを大きく左右します。
ギャップが起きたら
人は、組織や周りの人によって出せる力が変わります。前の職場でうまくいっていたのに、次で思うように成果が出ないことは珍しくありません。私もそうでした。自分を責めすぎず、なぜこの転職をしたのか、何を経験したかったのかという最初の目的に立ち返ってください。
よくある質問
MA未経験でも転職できますか?
MSLやMRなど、医師と接する職種からMAに進むルートがあります。MAの中にも複数の役割があるので、どの役割を目指すかによって必要な経験が変わります。
大手と中小、どちらのMAがいいですか?
分業された環境で専門性を深めたいなら大手、幅広い経験を早く積みたいなら中小が向いています。大事なのは、何の経験を取りに行くかを先に決めることです。
入社後のギャップで転職を後悔したら、すぐ辞めるべきですか?
慣れるまでに半年以上かかることもあります。まずは最初の目的に立ち返り、今の環境でできることを探してください。目的そのものが果たせないと分かったら、次を考えればいいと思います。
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執筆:のぶ。MR・MSL・MAとしての経験をもとにした見解です。組織の体制や役割は会社によって異なります。
